矯正治療の意義
歯の役割は“噛むこと”、“話すこと”、“コミュニケーションツール”の3つと言われています。この3つの要素は歯並びが悪いと十分に達成することができないことがあります。
噛むことは容易に想像がつくと思いますが“話すこと”は意外と思われるかもしれません。しかし、歯がなくなってみると空気が抜け滑舌が悪くなってしまい、うまく発音できません。これは歯並びが悪くても似たような現象が起こってしまいます。また、口は目と鼻と同じように顔のパーツの一つです。審美的な側面としても歯は重要な役割を果たします。新型コロナウイルスの影響で私たちはマスク生活を余儀なくさせられました。初対面からマスクのまま本当の顔を知らない方もいらっしゃるかと思います。そのため最近になってマスクを外した時の印象の違いには驚いた方もいるでしょう。それだけ口元は顔の印象に大きな影響を与えます。“自信を持って笑える”これはコミュニケーションにおいて大きな影響を与えるでしょう。
過去の研究においては、80歳でも20本以上の歯が残っている人のほとんどが歯並びに大きな問題を抱えていない人でした。反対咬合(受け口)、開咬(前歯が噛んでいない)、重度の叢生(歯のガタガタ)の方は(この研究では)一人も80歳で20本の歯がなかったそうです。想像してみると確かに八重歯や受け口のお年寄りの方は少ないように感じます。おそらく歯並びに問題がある方は歯がなくなり入れ歯になることで歯並びが良くなっているように見えているのです!歯並びが悪いと口の中でトラブルが起きやすく、逆に美しい歯並びというのは歯を長く機能させることが可能であり、メインテナンスもしやすいです。
歯科医学の発達によりプロケア(歯科医院でのクリーニング及び口腔衛生指導)とセルフケア(歯磨き)をすれば、歯を以前より残せるようになりましたが人生100年時代においては歯並びの悪影響により少しずつ悪化する可能性は否定できません。また、歯並びが悪い部位に関しては治療が非常に困難です。歯の形や治療をする器具は歯並びが正常であることを想定して作られているため器具も挿入しづらく、適切な歯の形を作ることができません。そのような治療環境にておいてはトラブルの再発を繰り返し、少しずつ抜歯に近づいてしまいます。虫歯や歯周病が発症しないようにするためにも、治療後の再発を予防するためにも綺麗な歯並びは重要と言えるでしょう。
患者さんが安心して治療を受けていただくために
患者さんに安心して治療を受けていただくためには知識と技術の集積に他なりません。私たちはこれまでも、そしてこれからも知識と技術の集積を行って参ります。そして患者さんにわかりやすく伝えることを行います。
矯正治療が歯科医学であるためには綺麗に見えるけど噛みづらいでは意味がありません。患者さんには安心して綺麗な口元になるのを期待していただき、噛み合わせ等の機能面では私たち医療者側が責任を持って治療を完遂いたします。そして治療後はメインテナンスしやすい環境作りを一緒に作っていきましょう。
当医院の矯正治療の特徴
当医院では矯正治療だけでなく虫歯や歯周病、予防処置、定期的なメインテナンスまで一貫して行えます。担当制で同じ歯科医師が一貫して治療に当たります。また院長と矯正医はチームを組んでおりますので、最初の診査診断の段階から治療ゴールに関して2人で綿密に治療計画を立案しております。矯正専門医からの視点と噛み合わせや審美修復治療の視点が治療計画に組み込まれており、患者様が満足する治療結果をご提供できると自負しております。矯正治療では顔貌との調和を考えて歯の位置を動かします。審美修復治療では歯の形と色を変えます。逆に申し上げますと、矯正治療では歯の形や色は変えることができませんし、審美修復治療では歯の位置は動かすことができません。このふたつの治療の強みを組み合わせることで審美的かつ、長期に安定する結果を生み出すことができます。これは“質の高い治療を提供する”という理念を共にする2人でないと生み出せない結果です。
成人矯正
成人された方が矯正を検討する理由は様々あるかと思います。噛み合わせが気になる、顎が痛い、歯並びが悪いなど患者さんによって様々かと思います。しかし多くの方が治療に求めていることは機能(良い噛み合わせ)と審美(ステキな笑顔)の両立だと思います。どんなに歯並びが良くても出っ歯になり顔と調和していなければ(笑顔がステキでなければ)意味がありません。当医院では顔に合った口元を意識して治療ゴールを決定します。また、ご自身では口の中を見ることはできないので噛み合わせについて詳細を理解することは難しいでしょう。さらに咬合理論(良い噛み合わせの考え方)は複数あり唯一無二の答えがあるわけではありません。そこで専門分野の異なる二人の歯科医師が多角的な視点から噛み合わせを検証することがより良い噛み合わせをご提供できると考えております。成人矯正は顎や歯周組織の成長が終わっており、かつむし歯治療の既往があったり、歯周病が進行していたりすることがあるので難易度の高い治療です。当医院では審美修復治療や歯周病治療を行う院長と矯正医が綿密に連携をとって治療を行っておりますのであらゆる症例に柔軟に対応できます。かつ治療後のむし歯や歯周病などのメインテナンスまで含めた一貫した治療を行います。
小児矯正
小児矯正において最も重要なことは顎の成長をコントロールすることです。あらゆる歯列不正は上下顎の対向関係(受け口や鳥貌)と顎と歯の大きさの不調和(乱杭歯など)から由来します。歯の大きさは削ったり、被せ物をしない限り形を変えることができません。しかし小児期に矯正治療を行うことで顎の成長を促し、歯を適正な位置に配置することができます。これは今後の人生を考えた時にとても大きな財産になります。現在、睡眠時無呼吸時症候群と歯科の関連性が注目されています。睡眠時無呼吸症候群は顎や歯並びにも関係性がある可能性があるため、小児矯正を行い顎の成長を促してあげることはとても重要です。また、歯が並んでからも成長する要素が残っており噛み合わせも馴染みがいいと言えるでしょう。
小児矯正とは主に床矯正(取り外し可能な装置)を行い、将来の歯列不正のリスクを最小限にするための治療です。成長が終わるまで経過観察を行い、前歯部には必要に応じてブラケットを用い、歯並びを綺麗にします。※成長・発育の状態によっては成人矯正が必要になることがあります。
矯正治療における抜歯・非抜歯
非抜歯矯正などどいう言葉はたまに見かけたりもしますが、あらゆる治療において診査診断があり、治療計画・治療方法というのが導き出されます。非抜歯矯正というのは治療方法の一つであり、目指すべき結果ではありません。顎と歯の大きさに不調和があれば(顎に対して歯が異常に大きい場合)、歯が顎の中で綺麗に並ぶことはありません。その場合、抜歯をせずに歯を並べると歯並びは良くなったとしても歯が顎の骨から飛び出していたり(早期に抜歯になる可能性があります)、顔に対して出っ歯になったりしてしまいます。当医院では出来る限り歯を抜かない矯正治療を行っておりますが、矯正治療において歯を抜かないことが目的ではありません。診査診断の結果、抜歯が必要であれば説明を行い、患者さんの同意のもと適切な治療を行って参ります。
<治療の流れ>
- 資料採得
- 診査診断
- カウンセリング/3者面談(患者・院長・矯正医)
- 治療開始(適宜メインテナンス・予防処置)
- 保定/メインテナンス
※矯正治療期間中は虫歯のリスクが格段に上がります。口腔内の環境に応じて1〜3ヶ月に一度は口腔衛生指導及びクリーニングを行います。
資料採得/診査診断
一般治療においても適切な治療を行っていくには、レントゲン写真、口腔内写真、歯周組織検査など資料採得が必要ですが、矯正治療においてはこれらに加えて顔貌写真、頭部X線規格写真(セファロ)、模型、などが必要になります。矯正治療においては噛み合わせをドラスティックに変化させるという壮大な治療を行っていきます。期間も一般的な歯科治療と比べて長期間に及ぶため診査診断と綿密な治療計画が最も重要になってきます。もしみなさんが遠い場所に旅行に行くとしたらまず現在地をきちんと把握し、その上で目的地を明確にし、目的地までの詳細な地図を持って出かけると思います。治療においては現在地の把握が診査診断、目的地が治療ゴール、そして地図が治療計画です。そのために資料採得は非常に重要になってきます。
カウンセリング/3者面談(患者・院長・矯正医)
当医院では治療を開始する前に患者さん、院長、矯正医の3者でカウンセリングを行います。ここでは治療ゴールの明確化と共有を行って参ります。患者さんが求めていることを私たちも把握しお互いにズレがないかを確認します。また、治療費や期間、注意事項なども確認し、治療を開始するかどうかを最終決定していただきます。
治療開始
各患者様の診査診断から導き出されたオーダーメイドの治療計画に沿って治療を行っていきます。
保定/メインテナンス
矯正治療後は後戻りと言われる、大きく動かした歯が元の位置に戻ろうとする現象が生じやすいのが実際です。特に矯正治療後半年は非常に動きやすいので何も対策をしなければせっかく並んだ綺麗な歯並びがまた崩れてしまいます。そこで保定装置という綺麗な歯並びを維持するための装置が治療後は必要になります。またむし歯や歯周病、噛み合わせも歯並びが悪くなる原因の一つのため一括してメインテナンスを行なっていきます。
歯並びのお悩み(coming soon)
受け口、口ゴボ、出っ歯、八重歯、すきっ歯、交叉咬合、開咬、乱杭歯、ガミースマイル
当クリニックの主な矯正治療
ワイヤー矯正
最も歴史のある矯正治療の一つです。しかしワイヤー矯正と一口に言ってもそれぞれの学派や流派があり医院によって提供する矯正治療は異なります。
当医院では世界で最も使用されているストレートワイヤーを用いたSWA(ストレートワイヤーアプライアンス)に基づく治療を提供しております。
過去のワイヤー矯正と異なり形状記憶合金のワイヤーを用いることで適切な力(一般的に想像される力よりかなり弱い力)を持続的に歯にかけることができます。
その結果、痛みも少なく、歯が動くスピードも早く、根吸収などのリスクも低くなります。また、ワイヤー矯正は長い治療の歴史があるため、様々な症例に対する解決方法も数多く編み出されています。
ワイヤー矯正は最も一般的かつ効果的な治療と言えるでしょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比較すると歴史が浅くまだまだ発展途上の治療方法です。しかし、現代のビッグデータの活用やAIなどを駆使して飛躍的なスピードで治療の技術が上がってきています。
マウスピース矯正の良いところは、目立たず、取り外しができるため歯のメインテナンスがしやすく、治療の経過や今後の歯の動きが分かることです。
また、ワイヤー矯正では難しいとされている動きも可能であることから、症例によってはワイヤー矯正以上の結果を出すことも可能です。
しかし、歴史が浅いため、まだまだマウスピース矯正のみでは困難なケースも存在します。当医院では適応症をきちんと考慮しマウスピース矯正を提供しております。
床矯正
主に小児矯正で用いる装置です。顎の発育の促進や顎間関係の改善に用います。
部分矯正
ワイヤー矯正やマウスピース矯正など様々なテクニックを用いて部分的に矯正治療を行う治療です。
全体の矯正治療と異なり部分で治療を行うため、歯を動かせる範囲が限られています。
被せ物の治療や噛み合わせの治療を行う際に包括的治療の一環として行います。
参考文献
Elderton RJ. Clinical studies concerning re-restoration of teeth. Adv Dent Res. 1990 Jun;4:4-9.
竹内史江,宮崎晴代,野村真弓,茂木悦子,原崎守弘, 谷田部賢一,山口秀晴,平井基之,佐藤晃一:Dental Prescale!を用いた8020達成者の咬合調査,歯科学報,105:154 ~162,205.
Andrews LF. The six keys to normal occlusion. Am J Orthod. 1972 Sep;62(3):296-309.
日経BP総研リポート「健康人生100年時代の新常識」